転職した話(心情面)



選り好みさえしなければ働き口などいくらでもあるので、
「次が見つからなければどうしよう」という気持ちになることはあまりなかった。

当時は「自分の身の回りの環境をすべて変えてしまいたい」という願望が強かったように思う。
同居人に甘え続けるような堕落した生活と別れを告げたかったし、自分一人で余裕をもって生活できるだけの給料も欲しかった。
未経験の業種でたくさんのことを学びたかったし、連休をもらって旅行をしたり会いたい人に会いに行きたかった。

漠然と、何もできないまま30代を迎えることに恐怖を感じていた。

そういった気持ちを土台として、関西から関東へ住居を移すことも真剣に考えていた。

元来、日常に多くの変化を望まない質であるため「’今’を手放すことへの恐れ」は非常に強く、
職も住居も一度に変えてしまうことの不安と、絶対に今の生活から脱却したいという願望とで板挟みになっていたのだろう。
企業や住居を探しながら泣き出したり、胃痛で途中下車を繰り返す日々の中で、自分の気持ちに折り合いをつけるのに必死だった。


この記事を投稿するまでに半年もかかってしまったのは、
後ろを振り返ったとき「あの頃に戻りたい」と思ってしまう自分と出会いたくなかったからかもしれない。
そんな自分と連れ添って、日々を穏やかに過ごす自信が私にはなかった。

しかし実際のところ、折り合いなぞつかずとも、日々は過ぎさり歩みを止めることはかなわない。
折り合いのついた心が日々を明るくしてゆくのではなく、過ごす日々が心をなだらかなものにしてくれるのだと気づいたころには、
毎日泣いていた自分の姿はどこにも見えなくなっていた。


ようやく、転職活動が終わったのだなあ、と思った。