「ねえ、おねえちゃんおんぶしてー」

未就学と思われる女の子と、おねえちゃんと呼ばれた小学校低学年くらいの女の子、それからその母親の三人、とある店先での出来事。

妹におんぶをせがまれ、一度は「お店の中だからまた後でね」となだめたものの、駄々をこねられ仕方なく妹をおんぶをしたおねえちゃん。

体格は自身とそう変わらない妹を一生懸命おぶっていたが、妹が背中で暴れたためバランスを崩して倒れそうになり悲鳴をあげる。そこで母親が「こらっなにやってるの!」と叱る。叱ったのはおねえちゃんの方。

おねえちゃんは「え、だって妹ちゃんがどうしてもって...」と消え入りそうな声で母親に言うが「お店の中でしちゃだめって言ってるでしょ!」と効果無し。おねえちゃんは口をつぐみなんとも言えぬ表情。

しばらくして店員が商品を渡しに親子連れの側へ行くと、母親が「おねえちゃん受け取って」と言う。おねえちゃんは店員に「ありがとうございます」と丁寧にお礼を言って商品を受け取り、頭を下げ店を出る。妹は最後まで母親とおねえちゃんにおんぶをねだっていた。



おねえちゃんの悲しそうな表情が、小さな声が、ただただ忘れられない。何故か私が泣きそうになってしまった。

こういうことが積み重なって、いわゆる「長女的性格」が形成されてゆくのだろうか。そして幼い頃の自分にもそんなことがあったのだろうかと思いを巡らす。それから多分あの妹ちゃんは将来きっと、素直に「ねぇ、◯◯してくれるー?」と人に言える子になるのだろうなぁと、少し嫉妬に似た感情を覚えた。